多国籍企業からスタートアップまで拡大途上の革新的な企業グループが、アイルランドにとって未開拓だった宇宙市場への進出を進めています。
2010年代初めからアイルランド企業の宇宙部門への関与は300%以上増加しました。アイルランドは半導体、通信、先端材料分野における40年の歴史を活用しています。
拡大を続ける商業宇宙部門は、民間投資の増加や宇宙飛行費用の低減などにより、2020年の3480億ユーロから2040年には1兆ユーロへ拡大すると予測されています。低軌道衛星からのデータ収集分析技術が主流となり、通信の安全性、AIを活用した地球観測、高精度な気象・海洋データの生成などに利用されています。「2010年当時、アイルランド国内に宇宙関連企業は30社程度でしたが、現在では多国籍企業と中小企業の双方で116社へと大きく拡大しました」とESA(欧州宇宙機関)アイルランド代表部副代表Conor Sheehan氏は述べます。
アイルランドでは、長年にわたる多国籍企業誘致への評価から、拠点を置く企業集団が宇宙部門で活躍するようになりました。Viasat社は衛星ブロードバンド接続技術を開発中で、Nammo社のアイルランド事業部はアリアン5号・6号ロケットに部品を供給しました。
Analog Devices社は欧州全域を対象としたマイクロエレクトロニクス・通信技術プロジェクトにアイルランド代表として参加しています。いずれも半導体産業におけるアイルランドの高い技術力を表すもので、アイルランド政府もこれを戦略領域と位置付けました。
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地上技術の宇宙への転用
「我が国としては独立した宇宙セクターを構築するのではなく、宇宙を高付加価値市場と捉えています。実質的に我が国の国家宇宙機関であるESAと連携して地上用に開発された技術を宇宙へ適応していますが、こうした革新技術の地上での新たな用途が見つかることも多々あるのです」とSheehan氏は語ります。
MBRYONICSのCEO兼共同創業者John Mackey氏はアイルランドの強みについて次のように指摘します。「アイルランドは欧州最大の半導体産業基盤をもち、先進フォトニクスのパッケージングおよびテスト分野でも、また医療機器分野でも世界を牽引しています。製造人材と製造能力も、すでに宇宙産業にも重要となる多くの重要部門で既に実証済みという、欧州では非常にユニークな存在です」
医療機器と宇宙産業をつなぐには、100%の信頼性をもつ機器が不可欠です。ENBIO社が開発した人工骨コーティングは、宇宙探査機を極度の放射線や高温から保護するのに役立ちます。NASAとESAの共同事業「ソーラーオービター」では、表面積の20%をSolarBlackで被覆しています。
アイルランドの通信技術の宇宙への応用
アイルランドが誇る高度の地上通信技術は、宇宙分野で大きな力となりました。「衛星産業とは5G NTN(非地上系ネットワーク)分野などでの共通点があるため、セルラー通信で培われた技術を十分に生かすことができます。確かな技術力があります」と語るのは、ST Engineering iDirectのグローバルアーキテクチャチームディレクターのTim Moriarty氏です。キラーニーに拠点を置くST Engineering iDirect(アイルランド)は中核的研究拠点です。
MBRYONICSは米国政府機関DARPAと画期的な契約を締結し、最先端シリコンフォトニクス技術を用いた衛星間通信を実現します。「アイルランドの技術で宇宙空間におけるインターネットを実現するというもので、当社の大きな誇りです…エンドツーエンドでアイルランド生まれのソリューションです」MBRYONICSはアイルランド西部に大規模製造拠点を設立中です。
Réaltra Space Systems Engineeringは、市販部品を使用して、低軌道に適した宇宙船ハードウェアを迅速かつ低コストで製造しています。ジェームズ・ウェッブ望遠鏡の打ち上げに際してはArianeGroupがRéaltraに動画システムの転用依頼をしました。
「象徴的だったのは2021年のクリスマスに打ち上げられたジェームズ・ウェッブ望遠鏡で、宇宙から初のフルハイビジョン映像を送信したことです。アイルランドの小企業がこれを成功させたことですべてが変わりました」とMartin氏は言います。Réaltraは現在、ボーイング社のサプライヤーとしてターンキー方式の航空電子機器システムを供給しています。今後5~7年の間に6~8万個の衛星の打ち上げが予測されているため、規模の拡大が期待されます。一方、ダブリンシティ大学のスピンアウト企業であるPilot Photonics社は、ESAとすでに 4 件の契約を締結しました。
アイルランド宇宙事業におけるパートナーシップの重要性
アイルランド政府産業開発庁は、クライアント企業に宇宙関連プロジェクトへの積極参画を促しています。Tristan McCallum氏は「対内直接投資企業にはこれを支援してアイルランドの既存基盤を活用する成長機会があります」と語っています。
「宇宙部門は急成長しているため、アイルランドの中小企業や多国籍企業との提携に関心を寄せています。アイルランドの先駆的企業集団の持つ実力で新たな扉が開かれます...その機会を生かすのはコラボレーションに他なりません」とESAのConor Sheehan氏は述べています。
Ireland’s Space Industry at a glance