アイルランドの研究者らが発明した物質が史上最速の磁気スイッチングを実証しました。
適応型ナノ構造・ナノデバイス研究センター(CRANN)とダブリン大学トリニティ・カレッジ(TCD)の研究者らは、フェムト秒レーザーシステムを利用して数兆分の1秒で物質の帯磁方向を切り替え、切り戻しに成功しました。
実証実験は従来の記録より6倍速く、パソコンのクロック速度より100倍速いことを実証しました。この結果はフィジカル・レビュー・レターに発表されています。
研究者らは、2014年にマンガン、ルテニウム、ガリウムから初めて合成されたMRGと呼ばれる合金で、前例のないスイッチング速度を達成しました。
実験の中では、MRGの薄膜に赤色レーザー光のバーストを照射し、10億分の1秒未満で数メガワットの電力を送電しました。
MRGの帯磁方向は熱伝導で切り替えます。切り替えには10分の1ピコ秒(1ピコ秒は1秒の1兆分の1に相当)を要しました。チームはさらに10兆分の1秒後に帯磁方向を切り戻せることを発見しました。
デバイスの新たな概念
この空前の発見は、高エネルギー効率の超高速次世代コンピューターやデータストレージシステム素材となる可能性を示しています。
トリニティ大学物理学部とCRANNのマイケル・コーイ教授は次のように語りました。
「2014年に私たちがマンガン、ルテニウム、ガリウムによる全く新しい合金MRGを生み出したと発表したときは、この物質にこれほどの磁気光学ポテンシャルがあるとは思いもしませんでした。
この実証実験は、光と時期に基づいたデバイスの新たな概念に導き、飛躍的な高速化とエネルギー効率がもたらす利益により、やがてはメモリーとロジックの機能を合わせもつ汎用素子の実現が可能となる可能性があります。
非常に大きな課題ですが、私たちはその可能性を示唆する物質を示すことができました。資金調達と業界の協力を仰いでこの研究を続けたいと念願しています」