日本とアイルランドは、共に島国で、地球の反対側に位置していますが、そのつながりは半世紀以上にわたります。現在、アイルランドへの日本の投資額はアジア最大で、雇用者数では世界第5位です。アイルランドには日本企業44社が進出、60事業所を展開し、約8000人を雇用しています。投資対象業種は、情報通信技術、ライフサイエンス・製薬、金融サービス、再生可能エネルギーなど多岐にわたります。
アイルランドが日本企業に魅力的なのは、2016年の英国の国民投票によるEU離脱選択以来、EU域内の主要英語圏国となったためです。この戦略的な位置付けにより、広範な欧州単一市場へのアクセスに最も適しています。アイルランドは開放経済により、依然としてEU内でも最も底堅い経済国に入ります。中央統計局の速報値によると、2025年第1四半期GDP予測は前期比3.2%の増加です。欧州委員会は、アイルランド経済成長率を2025年通年で3.4%、2026年には2.5%としています。
アイルランド経済の発展に伴い、アイルランドに移転して働く人々も増加しました。アイルランドに拠点を置く一部テクノロジー企業には、アイルランド国外出身者が従業員のほぼ50%に達しているところもあります。現在、全国で1800社を超える多国籍企業が事業を展開しています。
事実、日本企業に顕著な傾向として首都ダブリン以外の地域拠点への積極的な支持が挙げられ、多くの企業がコーク、ケリー、リムリック、クレア、ゴールウェイ、ウォーターフォード、ドニゴールなどに投資しています。中にはアイルランド国内に複数の拠点を置くところもあり、住友三井銀行(SMBC)と三菱はそれぞれ5事業所を展開しています。
当然ながら、アイルランドに投資する日本企業の多くはテクノロジー系です。世界有数のサイバーセキュリティ企業トレンドマイクロは、コークからEMEA向け事業を展開しています。300人の従業員は、同社の戦略的機能に従事しています。東京エレクトロンやニコンなどの有名企業も欧州でも最も注目を浴びる半導体バリューチェーンに組み込まれています。ライフサイエンス分野でも、知名度の高い武田薬品工業がアイルランド国内3拠点で約1000人を雇用しています。日本の大手製薬会社ではアステラス製薬も、ダブリン県とケリー県に事業所を抱えています。日本企業のアイルランド市場進出手段として多いのが買収です。三菱はとりわけ積極的で、アイルランドのエネルギー取引・サービス企業ElectroRouteや昇降機事業会社Ascension Liftsを買収しました。
日本企業の意思決定の決め手は、優秀な人材基盤と企業優遇政策だったとよく耳にします。アイルランドが投資先として優位となる要因にはもう一つ、企業成功の支えとして尽力するエコシステムの存在があります。例えば、教育機関は企業のニーズと密接に連携し、多くの分野で企業との協力のもと学習プログラムの開発や人材プールの拡大を進めています。
アイルランド政府産業開発庁のような政府機関は、投資家と話を進めるにあたりパートナーシップのアプローチをとり、現地視察の調整や既にアイルランドに進出している同業他社経営陣との面談設定により、新規参入企業にアイルランド進出が正しい判断であるという情報や安心感を提供しています。コンシェルジュサービスにより、政府機関、規制当局に加え、税務、給与計算、法務サービスの専門業者の紹介の手配にも応じます。
形態としては、研修やスキルアップ、また、技術革新の風土の醸成や業務変革の支援・補助も挙げられます。
アイルランドに拠点を置く企業の改革、改善、技術革新支援へのアイルランドの継続的取り組みには、継続改善を意味するKaizen文化が反映されていると日本の皆様はすでにお気づきかと思います。
日本の企業風土にもうひとつ特徴的なのが関係構築であるため、アイルランド政府産業開発庁では各クライアント企業に専従のリレーションシップマネージャーを配置し、アイルランド進出の決定後も対話の継続に当たらせます。常に、ニーズに耳を傾け、解決策の捻出に尽力します。アイルランドでは、ビジネスを単なる商取引ではなく、真のパートナーシップと捉えています。貴社の成功は我が国の成功でもあるのです。