アイルランドには90社を超える製薬企業が拠点を置き、全国で約5万人を雇用しています。CSO(中央統計局)が2025年2月に発表した数値によると、医療品・医療機器の輸出額は2024年に999億ユーロに急増し、輸出総額の約45%を占めました。世界の製薬会社上位10社のうち9社がアイルランドに大規模な拠点を設置しています。
アイルランドは、HRPA(医薬製品規制庁)を通じて、FDA(米国食品医薬品局)やEMA(欧州医薬品庁)などの国際的規制当局と緊密に連携しています。現在、アイルランド国内にはFDA認定工場が50ヵ所あります。2003年以来、アイルランドの12.5%という競争力のある法人税率も、多国籍企業の投資誘致に大きく貢献しました。加えて、アイルランドは国家開発計画の一環として、2030年までにインフラ事業に1650億ユーロを投じることを決定しました。
アイルランドの主要製薬企業上位10社
Pfizer:4拠点で約5000人の従業員を擁するPfizerは、アイルランド国内で最大の製薬企業の一つです。この米国製薬大手は、アイルランド事業に100億ドル以上を投資し、関節炎、炎症、がん、血友病、疼痛、脳卒中の分野で最もよく知られている医薬品とワクチンを製造しています。
Eli Lilly:米国企業Eli Lillyは、1978年からアイルランドで事業を展開し、3拠点で従業員3700人あまりを雇用、全国に営業チームを配置しています。同社は糖尿病と体重管理の大型新薬「ゼップバウンド」と「マンジャロ」で知られています。2024年、Lillyはアイルランドへの18億ドル投資で事業を拡大しました。
Johnson & Johnson:米国の大手ヘルスケア企業Johnson & Johnson(J&J)は、1935年からアイルランドで操業しています。5県に10拠点を展開、従業員は6000人あまりに上ります。コーク県リングスキディ工場では、重要な免疫およびがん治療薬を製造、リトルアイランド工場では、神経科学領域および感染症治療用のバルク原薬を大量生産しています。
AbbVie:米国のバイオ医薬品企業 AbbVie は、アイルランドで重要な地位を占め、6 拠点で約2900 人を雇用しています。2013 年にAbbott Laboratoriesから分社化した AbbVie は、主力製品の関節炎治療薬「ヒュミラ」で知られ、2020 年に Allergan を買収して、大人気のシワ治療注射剤「ボトックス」も傘下に収めています。
Novartis:Novartisのアイルランドでの事業展開は 1950 年代に遡ります。スイスに本社を置くこの製薬大手は、ダブリンで約 900 人を雇用しています。Novartisは、神経科学領域、心臓血管、免疫、がん、細胞および遺伝子治療、放射性リガンド治療に重点を置き、心不全治療薬「エントレスト」の製造で有名です。
AstraZeneca:英国スウェーデン系の製薬会社AstraZenecaは、アイルランドで100人あまりを雇用、循環器、がん、呼吸器治療薬に注力しています。抗がん剤と新型コロナワクチンで知られる同社は、ダブリン北部での次世代原薬製造施設設立に3.6億ドルを投資しました。
Merck:製薬会社Merck(MSD)はアイルランドで50年近く事業を展開しています。ティペラリー、コーク、ミース、ラウス、カーロウ、ダブリンの7拠点で3000人以上を雇用しています。同社は、がん治療の大型新薬「キイトルーダ」で最も有名です。
Amgen:1998年にアイルランドに商業拠点を設立した米国製薬会社Amgenは、現在ダブリンの2工場、ウォーターフォードの1工場で1250人を雇用しています。ダブリン県のダンレアリー工場はAmgenの米国外最大の工場です。
Gilead Sciences:Gilead Sciencesは、ブロックバスターのHIV予防薬「ツルバダ」と「デシコビ」で知られます。同社はアイルランドに進出して20年を超え、アイルランド国内の雇用数は500人を超えました。コークの製造施設では22種類の製品を生産し、ダブリンの配送センターはグローバルな配送ハブとして機能しています。
Sanofi:フランスの製薬会社Sanofiは、アイルランドで20年以上事業を展開、循環器疾患、糖尿病、多発性硬化症、血栓症、2型炎症、ワクチンの幅広い治療領域で改善薬を開発しています。2001年に設立されたウォーターフォード工場は、同社の主要治療薬の多くを取り扱う主要流通センターとして機能しています。
アイルランドの小規模・新興製薬企業
アイルランドの活気ある製薬業界には、技術革新、雇用、輸出に大きく貢献する革新的な地元企業が急増しています。
EirGen Pharma:ウォーターフォードに本社を置くEirGen Pharmaは、ヒトと動物の健康のための高薬理活性医薬品を開発・製造しています。同社は、米国、欧州、日本、カナダ、中東、アフリカ、オーストラリアなどの主要医薬品市場をはじめ60ヵ国以上の患者に製品を提供しています。
Nuritas:2014年に設立されたDublinを拠点とするバイオテクノロジー企業Nuritasは、人工知能を活用して、食品や食品副産物に含まれる分子でライフサイエンス部門のサプリメントや新薬候補の特定に利用可能な生物活性ペプチドの発掘に取り組んでいます。