量子コンピューティングのスタートアップ企業Equal1は、初のアイルランド製量子コンピュータ「Bell-1」を発表しました。同社によると、Bell-1はデータセンターおよび高性能コンピューティング向けに設計された世界初のシリコン量子サーバーでもあります。
このコンピュータは、3月17日の聖パトリックの祝日にシリコンバレーで開催されたグローバル・フィジックス・サミットで初公開されました。
量子力学の理解に革命をもたらしたベルファスト出身の物理学者John Stewart Bellにちなんで名付けられたBell-1は、今日のマイクロチップを駆動する既存の半導体技術を基盤に構築された世界唯一の量子サーバーだとEqual1は主張しています。
シリコンベースの量子サーバーは、複雑なインフラに依存する従来の量子システムとは異なると同社は説明します。
シリコンベースの量子プロセッサーは既存のチップ製造技術と互換性があるため、同社は、既存の半導体技術の使用と組み合わせて、今日のデータセンターに組み込めるスケーラブルで商業的に有望な量子プロセッサーの構築を実現しています。
さらに、同社によると、Bell-1は他の量子マシンと比較して「大幅に」低い1600Wの電力で動作します。このため、大規模な環境フットプリントを要せずに量子コンピューティングを容易に導入できると同社は付け加えました。
また、クローズドサイクルクライオクーラーにより0.3ケルビン(-272.85℃)で動作することができるため、外付けの大型の希釈冷凍機を必要としません。
昨年12月、同社は、ほぼ-273℃で動作する「世界最冷」の量子コントローラーチップを紹介し、この技術により量子コンピューティングのスケーラビリティが向上すると述べていました。
発表の中で、同社の技術開発は「量子コンピューティングと古典コンピューティングのギャップを埋める」と、Equal1は述べていました。Bell-1は古典コンピューティングを置き換えるのではなく「増強」するもので、既存のCPUやGPUベースのワークロードとともに動作する6量子ビット量子処理システムとして機能します。
このコンピュータは現在販売中で、量子コンピューティングの新たな時代の先駆けだと同社は述べています。今後の「Bell Quantum Server群」の次世代モデルには、Equal1の量子SoC(システムオンチップ)技術が組み込まれる予定です。
「Bell-1は、量子コンピューティングの導入と活用方法におけるパラダイムシフトを引き起こします」と、Equal1のCEOであるJason Lynch氏は述べました。
「当社は量子技術を研究室から技術革新を推進し、複雑な計算課題を解決することができる実環境へ持ち出しました。まさに量子コンピューティング2.0の幕開けで、アクセス性、スケーラビリティ、実用性が重視される時代となりました」
「コスト、インフラ、複雑さの障壁をなくすことにより、Equal1は企業が量子コンピューティングの指数関数的パワーを今すぐ活用できるようにしています。遠い未来の話ではありません。Bell-1は単なる前進ではなく、コンピューティングにおける革命です」
Equal1は量子業界に次々と話題を提供しています。2月に、オランダ応用科学研究機構(TNO)が創業7年目を迎えたEqual1への投資を発表しました。
昨年には、Equal1は世界有数の半導体メーカーNVIDIAと提携して、クラウドとデータセンターの展開に向け量子-古典インフラの統合と検証に取り組むと発表していました。