新型コロナウイルスの入院患者の多くがせん妄を経験していることから、Journal of Neuroscienceに発表された研究がこの障害の影響を緩和するうえで重要な役割を果たす可能性があります。
せん妄は、特に高齢者によく見られ、混乱と苦痛をもたらす障害で、細菌やウイルス感染等による高度な炎症があるときに発生します。この結果、脳の機能が変化し、気分ややる気に悪影響を与えます。この最新の研究でトリニティ・カレッジ・ダブリン(TCD)の科学者らはせん妄と脳エネルギー代謝障害の間に新しい結びつきを発見したと発表しました。
マウスを使った実験で、科学者らは人工的に引き起こした末梢性炎症が突発性の認知機能障害を発症させることを発見しました。また、このマウスでは脳の正常な機能を維持するために必要なブドウ糖レベルの低下が見られました。
ブドウ糖は奇跡の治療ではない
マウスにブドウ糖を補給すると、炎症が継続していても認知能力が正常に戻りました。研究者らは追加の研究から、人間にも同じようなメカニズムがあることが示唆されると述べました。これはせん妄の患者から採取した脳脊髄液にも脳のブドウ糖代謝の変化を示すマーカーが含まれていたためです。
TCDの生物医学研究室で指導を行うコルム・カニングハム教授は次のように語りました。「これらの実験の重要な点は、早期の神経変性病の持病があるマウスは、代謝変化が発生したときに機能障害を起こしやすくなっていたということです」
「オスロでの共同研究でも、せん妄を患う人から採取した脳脊髄液に脳ブドウ糖代謝の変化の証拠が見つかりました。これは人間とマウスに同じようなメカニズムが存在することを支持するものです。つまり、人間でも類似したプロセスが働いているしるしです」
しかし、患者にブドウ糖を投与するだけではほとんどの場合せん妄の治療にはならない、むしろ高齢の患者やせん妄患者には酸素とブドウ糖の適切な供給が重要になり得る、とカニングハム教授は付け加えました。
Colm Gorey著
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