がん関連のリソースやデータベースを連携させることで研究者やイノベーターによるアクセスへ便宜を図る新たなEUイニシアチブが発足しました。欧州がん画像診断イニシアチブ(European Cancer Imaging Initiative)は、EU全域で容易にアクセスできるデジタルインフラを構築し、病院や研究者を画像データやその他の関連データにつなげることを目的としています。

主な目的は、研究者に、現在欧州の数々の研究センターや臨床センターに散在するさまざまな種類のがんに関する高品質なデータへのアクセスを簡便にし、データの更なる有効活用を図ることです。このデータ資源は、さらに、がん研究を促進し、がん患者のための新たなケアを生み出すために利用されます。

欧州委員会は、がんの予防、治療、ケアにおける新たなアプローチを目指す「欧州がん撲滅計画」の旗艦プロジェクトとして、このイニシアチブを立ち上げました。計画されている国境を越えたインフラは、大規模なデータセットで新たなAIモデルを訓練してがんの診断と治療を後押しするなど、新たな技術による医学研究のスピード化に努めます。

本プロジェクトは、デジタル・ヨーロッパ・プログラムから1800万ユーロの投資を受けています。プロジェクトの現行スケジュールでは、汎欧州デジタル基盤の設計を2023年末までに完了させ、プラットフォームの最初のバージョンを2024年末までに提供し、最終リリースは2025年末となる見込みです。本プロジェクトは、デジタルインフラの2026年本格稼働を目標としています。

がん画像診断データは、デジタル・ヨーロッパ・プログラムが設立した試験・実験施設(TEF)に提供されるため、がん治療用のAI製品を開発した中小企業が、実際の環境で検証することも可能となります。

ティエリー・ブルトン域内市場担当委員は、デジタル技術とAIが「がんとの闘いにおける鍵」であると述べています。「これらの技術の原動力は、高品質のデータです。欧州がん画像診断イニシアチブによって、豊富なデータを解放して革新的ながん治療ソリューションへと転換していきます。中小企業や新興企業が重要な役割を果たすでしょう。医療におけるAIのための新たな試験・実験施設により、データ駆動型のイノベーションを実際の状況で検証できるようにします」

昨年12月には、アイルランドの研究者が、EU域内で効率的かつ安全なデータ取引を行うためのデジタル市場の創設を支援していることを明らかにしています。