本気でスマート社会を目指すつもりなら、アイルランドはクラウドコンピューティングに精力的に取り組むべきだ、とマイクロソフトアイルランド社長、ポール・レリス氏は言う。アイルランド国内で1500人を雇用するマイクロソフトは、今年、アイルランドでの創業25周年を迎えた。
同社のこの間の歩みこそ、変わりゆくアイルランドのデジタル展望を見事に映すものと言える。アイルランドでの操業開始当時、業務は事実上ソフトウェアの箱にディスクを入れ、世界に出荷することだった。ストックオプションで大金を手にした連中が組み立てラインに立っている、とメディアは揶揄したものだ。
現在、マイクロソフトのアイルランド事業は高度化され、世界を視野に、131カ国に影響を及ぼすまでに至っている。アイルランドで作成されたソフトはインターネット経由でデジタル輸出され、昨年には同社は5億ユーロを投じてダブリンにデータセンターを構築した。ここではマイクロソフトのインターネットサービスのすべてを、ホットメールからBing、さらにはクラウド時代のマイクロソフト ウィンドウズOSとなるAzureプラットフォームまで取り扱うことになる。
アイルランドのデジタル革命の目玉はクラウドしかない、とレリス氏は言う。「クラウドコンピューティングのコンセプトそのものとインターネットの持つパワーがカギです。コンシューマーサービスをオンデマンドで、必要なときに、必要なデバイスで提供するということですから」
「ITと言えば、IT産業自体がアプリケーション開発の上に成り立っているわけですが、そのアプリケーションがまた脚光を浴びています。中高生や大学生がアプリケーション開発に力を入れ、学べるようにすれば、アイルランドは非常に大きく飛躍できます。新技術だけじゃない。世に出回るアプリケーションの量、出回るアイフォンのアプリケーションを見れば、その多くは新しい技術じゃない。ビジネスプロセスなんです。請求書や消費税の計算をどうやるか、ビジネスでやりたいことをどう実現するか」
レリス氏は2000年1月にマイクロソフトに転職する前、コカコーラ株式会社で財務、営業、業務の管理職についていた。2008年にはアメリカ商工会議所会頭に就任、今も理事を務める。IBEC(アイルランド事業主雇用主連合)運営機関に名を連ね、アイルランド経営者協会と国立デジタル研究所の理事でもある。教育省が予算1億5千万ユーロの「スマートスクール」計画に基づいて立ち上げた共同推進グループの議長、さらにはアイルランド高等教育の新規国家戦略発展を検討する運営委員会の委員長も務める。
レリス氏は、マイクロソフトのグローバルなクラウドビジョンの核をなす5億ユーロ規模のデータセンターがアイルランドの進む方向を明確に示していると確信する。「このデータセンターがアイルランドに出来てとても誇りに思っています。まさに世界中がほしがる資産で、開発者や生徒たちを連れて行っては88ラック分のサーバーや実現可能な効率化の規模を見せることができます。あれだけの規模を見れば、インターネットとクラウドの持つパワーが納得できます。しかし、真の課題は、教育制度を通してアプリケーション開発の思考を構築し、アプリケーションを開発させることにあるんです」
「アイルランドでは現在400社がクラウド版ウィンドウズ、Azureで開発しています。当社では顧客企業にウィンドウズベースで開発をする場合にオンプレミス(自社運用)はお勧めしていません。Azureで、クラウドでやればコスト削減ができると。400社も悪くない数字ですが、4000社がクラウドに進んでもおかしくない。参入障壁が大幅に下がるんですから」
「ハイエンドコンピューティングは、かつてはお金を持っている大企業の専売特許でしたが、現実にクラウドがこれを崩し、誰にも手が届くものにしました。アイルランドで十分注力できていないのがもったいない」
レリス氏は、アイルランド国内の発想力に富んだ起業家の数に元気づけられたと言い、ベンチャーキャピタルや多国籍のテクノロジー大手との距離的近さに加え、若い新興企業の立ち上げを容易にすべきだと言う。
マイクロソフトやグーグル、イーベイ、アマゾンのようなインターネット巨大企業や、アイビーエム、アップル、デル、ヒューレットパッカードのようなテクノロジーの重鎮のプレゼンスにより、アイルランドは欧州のインターネットの中心地になれる、と彼は言う。「アイルランドは世界をリードするクラウドやウェブアプリケーション開発センターにだってなれる。ダブリンだけじゃなくても、国全体がそうなってもいい。テクノロジーは障壁をなくすもの、お金がなくても身体が不自由でも経済活動に参加できるようにしてくれるのがテクノロジーなのですから」
ヒューレットパッカード(HP)のゴールウェイの事業所が、有害食品を追跡し、世界のサプライチェーンからなくすクラウドベースの大手リコールサービスの陣頭指揮を執ると発表した。
デジタル・イクイップメント社の一環として40年前に誕生したゴールウェイ事業所は、国際非営利団体GS1のカナダの機関と共同でサービス導入を実施する。
HPのカントリーマネージャー、マーティン・マーフィー氏は、クラウドベースのサービスがスーパーマーケットでの消費者の判断に影響を与える新しいコンピューター時代の黎明期にあって、本契約はアイルランドに飛躍的進歩をもたらすものと述べた。
「このイニシアチブはHPのゴールウェイ事業所が先陣を切るもので、地域に雇用をもたらす大手クラウドコンピューティング研究施設創設への第一歩となる」とマーフィー氏は語った。
アマゾン社CTOヴォーゲルズ氏がダブリン・クラウドコンピューティング・サミットで講演最高技術責任者ワーナー・ヴォーゲルズ博士は、アマゾン社の技術ビジョンを推進している。インフォメーション ウィーク誌は氏のクラウドコンピューティング実現への功績を称えて2008年度CTOオブ ザ イヤーに指名した。
氏は先週ダブリンに滞在、ダブリンで開催されたクラウドコンピューティングサミットで講演した。
「実質全業界の企業がクラウドコンピューティングのもたらすオンデマンドで拡張可能な従量制の利益を活用しています。こうしたサービスは、技術メーカーの顧客に提供するサービスや商品、そして顧客のIT購入方法を急速に変えていると確信しています」
「かつては巨額の設備投資、インフラの未活用、そして差別化が不十分なITへの時間と努力の無駄がありました。今後は設備投資なし、従量課金でビジネスの差別化に注力できる時代になります。CEO、CFO、CIOはテクノロジーインフラをしっかり見極め、差別化して付加価値がついていることを確認する責任を株主に果たせばいいのです」とヴォーゲルズ氏は語った。
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