アイルランドのゲーム業界、次のレベルへ

アイリッシュ・タイムズ紙
2011年2月25日(金)

急成長中のゲーム業界は誇大広告と財力でハリウッド映画業界を急速に侵食しつつあり、アイルランドは重要なプレイヤーになろうと願っている(キアラ・オブライエン記)。

ゲーム業界はここ20年で大きく変わった。一時は十代の男の子の遊びと思われていたものの、カジュアルなゲームやソーシャル・ネットワークの開発により、ゲームに対する考え方が大きく転換した。そして、これが数十億ドル産業になろうとしている。

無視できないトレンドである。いまや人気ゲームタイトルの発売は、かつて映画産業にしか見受けられなかったレベルの関心や刺激的な宣伝を引き付けているのだ。

『コール オブ デューティ モダン ウォーフェア2』の2009年発売当時、米国と英国では初日に3億ドル以上の収益を出した。昨年、『ヘイロー:リーチ』は欧米で一週目の週末に2億ドルを稼いだ。2010年最大の映画の封切を上回る数字だ。ゲームはもはや一大産業であり、ソーシャル・ゲームの成長により、さらに大きくなることが見込まれている。

グローバル規模では、過去10年間にビデオゲーム業界の規模が急速に拡大した。2013年にはこの市場は730億ドル規模に達すると予測されている。さらに重要なのは、ソーシャル・ゲームとオンライン対戦の人気の高まりにより、業界自体の様相が変わったことだ。開発者にグローバル市場が開かれただけでなく、業界にも逸材や税制支援を提供する新たな拠点を探す機会が開かれた。この急速に変化を続ける市場で、アイルランドは重要な役割を担いたいと願っている。

国が小さいからと言って、とっぴな思い付きというわけでもない。昨年11月にダブリンで開催されたウェブサミットでは、アイルランドがゲーム開発で大きな役割を担うという構想が専門家の間で討議された。ナムコの元役員で現在ベンチャー・キャピタル・ファンドのアザー・ベンチャーズ社を率いるバリー・オニール氏は会議の場で、開発者にもっと税制支援を提供できれば、アイルランドはモントリオールのようにゲーム開発の中心地になれると提言した。

例えば世界最大のゲーム『コール オブ デューティ』は、アイルランド企業の技術を利用している。一方、一流のインタラクティブ ソフトウェア サービス事業者であるハヴォック社は、1998年創業当時のトリニティ・カレッジ時代から成長して、多国籍企業の一員となった。アイルランドはいくつかの点ではゲーム業界をリードしており、こうした利点をアイルランド政府商務庁や産業開発庁といった政府機関がしきりにフル活用しようとしているのだ。

比較的初期段階とはいえ、アイルランドでゲーム産業は急速に伸びている。ここ8年間で、この分野で設立された企業数は著しく増加した。

アイルランド政府商務庁の資料から、アイルランドおよび英国市場はほぼ20億ユーロ規模と推定されるが、そのかなりの部分(3億5000万ユーロ近く)をMMO(多人数同時参加型オンラインゲーム)市場が占めている。アイルランド政府産業開発庁は、そのクライアント企業だけでおよそ2,000人を雇用していると推定している。

「この部門は今後2~3年でおよそ50%伸びると見ています」と、アイルランド政府産業開発庁のトーマス・マックイーヴォイ氏は言う。

アイルランドは、1980年代に数々の企業がソフトウェア部門を伸ばし、1990年代後半にはインターネット企業が台頭するなど、いっときハイテク産業の構築に専念していた。これがすべて今日アイルランドをゲーム部門の潜在的センターと位置づけるのに役立っている。

近年こうした成長があったことも驚くに値しない。多くの多国籍企業が、低い税率や欧州進出び足がかりとして利用できるという条件に魅せられ、また、スキルの高い労働者の存在に引かれてアイルランドに拠点を築いてきたからだ。

ヴィヴェンディ、マイクロソフトゲームスやアクティビジョンすべてがアイルランドに拠点を設立しており、EAなどは新しいほうだ。「いきなり、ゲーム業界にとって大いに魅力的なエコシステムができ上がったのです」と、マクイーヴォイ氏は語る。国内企業にもグローバル規模で悠々と競争できるまでに成長するところが増えてきている。

アイルランドにはこの産業に貢献できるものが多々あり、また逆も真なりだ。アイルランド政府商務庁によれば、アイルランドのゲーム部門に属する企業の多くはミドルウェアやゲームの開発に携わっている。しかし、ゲームの設計にさらに関与していく機会も、とりわけ最近の変化を見ればあるのだ。

「グローバル規模で、ゲーム市場は大きく転換しつつあります。数多くのビジネスモデル、数多くの新しい消費傾向が現れてきています。まさにこういったものから、我々はこれまで利益を得てきたのです」と、アイルランド政府産業開発庁デジタルコンテンツ プロジェクトマネージャーのメーヴ・マッコノン氏は語る。

「ゲーム市場は変わりました。膨大な人口を巻き込んだ、ずっとダイナミックな産業になっています。新たなデバイス、新たな消費方法への動き全体が、新たな機会を推し進めてきました。我が国は、その波に乗って上昇しているように思われます」

いまやインテル社配下となったハヴォック社は、サクセスストーリーの一例だ。ダブリンを拠点とするこのソフトウェア企業の技術は、『アサシン クリード』シリーズ、『バトルフィールド バッド カンパニー 2』、『ヘイロー 3』、『ハーフライフ 2』など、270以上のタイトルに使用されている。その領域は映画業界にまで拡大、ハヴォック社の技術は『マトリックス』や『X-MEN: ファイナル エディション』から『トロイ』や『007 慰めの報酬』まで特殊効果を促進してきた。

「ハヴォック社の起業当時は、非常に高い技術のハードルがありました。企業が内製技術と一緒にサードパーティーの技術を使うという文化がなかったんです。そのため、ハヴォック社があの手この手で先駆的開発をしなければならなかったものの一つが、ミドルウェアとサードパーティー技術を大がかりなゲーム制作で利用するということでした」と、ハヴォック社のデビッド・コフラン社長は言う。

この状況も、企業が一から作らずに技術を購入する価値に気づいてから変わった。
ゲーム制作への参入障壁が大きく下がったことも重要だ、と言う。

「再び、5人ぐらいの少人数でもゲームを手に入れ、製作し、市場に出すということが実現可能になりました」と、コフラン氏は語る。「まさに8ビット時代にコモドール64を駆使して、一人の人間が最初から最後までゲームをプログラミングし、ほぼ出版までやっていた時代に戻っているのです。アートプログラミングもデザインもこの一人の人間がやっていました。それが映画級のタイトルに進化して、50人強のチームになるまでになっていました。それがまた元に戻ったんです。

アイルランドで初めて存続可能な産業が生まれたとも言えます。実際、5年前なら、この国で大規模な制作チームを立ち上げられるだけの財政支援があったとしても、製品のクリティカルマスも、アートやプログラミングの人材もなく、一気にすべてを引きつけるのは実現不可能だったでしょう」

ジョルト オンライン ゲーミング社のディラン・コリンズ氏は、アイルランドでのこの産業の近年の発展を実際に体験した。コリンズ氏には輝かしい経歴がある。彼が開発したミドルウェアツール、Demonwareはアクティビジョン社が2007年に1,000万ドルで買収した。2009年には、ゲームストップ社が彼のゲーム会社の大株主になったが、彼は今もそこで最高責任者として在籍する。

「我が国は世界最大級のオンラインゲームのハブなんです。あまり話題に上りませんが」と、彼は言う。「アイルランドは、多くのアメリカ企業にとって欧州市場にサービスを提供するうえで最高の拠点です。文化的に言っても、アメリカに非常に似ています。英語も話します。事業を始めるのも非常に簡単ですし、ドイツ語もフランス語を必要とせずに住めるという利点があります。

欧州は一大市場ですが、文化と言語の細分化が深刻な問題で、米国企業にとってはとりわけ深刻です。ですからアイルランドは仕事がしやすい場所なんです」


アイルランドのこの産業に絶好の機会とみなされる分野が、ソーシャル・ゲームとダウンロード可能なゲームだ。それも難なく理解できる。アイルランド政府商務庁の資料によると、ソーシャル・ゲームは2009年に10億ドル産業だった。翌年にはおよそ30億円規模になると期待されている。

この成長を後押ししているのが、スマートフォンなどによるインターネットアクセスの増加と、フェースブックのようなサイトの進化により、ここ数年間に起きたソーシャル・ネットワーク活動の激増だ。ロケーションベースのサービスも、ソーシャル・ゲームの巨大市場を生み出した。

「ソーシャル・ネットワーク活動の増加の中でもソーシャル・ゲームが最も急成長している部門ですし、スマートフォンの増加に伴ってアイフォンやアンドロイドといったプラットフォームが機会をもたらしていることから、アイルランドもとても良い環境にあると言えるでしょう」と、アイルランド政府商務庁広報官は言う。

そしてまたオンラインであるがために、地理的条件ももはや問題にはならない。

「ゲーム業界はグローバル市場ですから、アイルランドからも当然アクセス可能です。地理的制約はありません」と、コリンズ氏は言う。「障害はありません。やるべきことをやっていけば、グローバルに注目を集めていけば」

まさにポップキャップやジンガといった、アイルランドで事業を展開する企業が恩恵を受けてきた市場である。

ポップキャップ社は、PCやモバイルプラットフォームにダウンロード可能なバージョンを提供するとともに、フェースブックでゲームを提供し、ここ数年、アイルランドでの事業を大きく伸ばした。

「欧州市場にサービスを提供するには、欧州に拠点を持たなければならないという判断をしました。明らかにこの国が提供する語学能力が、さまざまな欧州言語に対してサービスを提供し、お客様の言語で弊社のゲームを提供する上で役立っています」と、ポップキャップ社のポール・ブレズリン部長は言う。

アイルランドに拠点を置く価値は、アクティビジョン、EAやマイクロソフトも評価しており、それがアイルランドへの拠点としての関心をいっそう駆り立てている。

「まだここに拠点がないところは、ぜひそうすべきだと思えますね。みんなが集まっているところには出て行くものでしょう」と、コリンズ氏は言う。

しかし、機会はそれにとどまらない。

「かつてアイルランドに進出した多くの企業はただローカライゼーションやカスタマーサポート用のチームを立ち上げただけでしたが、今ではゲームスタジオを設立する企業が出てきています」と、ブレズリン氏は言う。

「非常にスキルの高いゲーム開発者、才能ある人たちなので、この国でゲーム産業を推進する上では本当に役立ちますよ」

経済面での悲観的な先行きがアイルランドに暗い影を落としているいま、前向きなニュースは何であれ歓迎だ。急速成長を続けるゲーム業界こそ、アイルランドが近未来に予測される「雇用なき成長」のサイクルから抜け出すのに必要なものかもしれない。

一例を挙げれば、ポップキャップ社は、今後数年でアイルランド国内での事業規模を倍増することを検討している。現在の雇用人数は60人だが、5年前は9人で始めた。

「どんどん企業がアイルランドに拠点を移してきていますので、今身を置くにはとてもよい分野です」と、ブレズリン氏は言う。「拡張を考えないゲーム会社など、あまり聞いたことがないですから」

「みんな、生産性が高く、やる気があり、科学技術に精通した労働力がここにはあり、欧米工業国の取引のやり方と一貫したやり方で取引するのに慣れていることはわかっています。それがここで事業を始めたいという人々の火付け役になるはずです」と、コフラン氏は語る。


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