デジタルで成功する―アイルランドの「欧州インターネットの中心地」への道

2011年7月28日
ジョン・ケネディ
シリコンリパブリック 

アイルランド政府産業開発庁のエマヌエル・ダウドール氏は、グーグル社、フェースブック社、ジンガ社等の獲得によりアイルランドを「欧州のインターネットの中心地」に仕立て上げたチームのリーダーだ。

先日のゲーム会社、ジンガ社によるダブリン、ボールズブリッジでの新旗艦施設開所式典で最高執行責任者マーカス・シーガル氏がアイルランド進出の理由を端的に説明したとき、多くを物語るようなひとときがあった。ジンガ社は現在国内で55人を雇用しており、これが数カ月で100人を超えるまでに伸びる可能性がある。

「アイルランド政府産業開発庁は我が社の取り組みにかけがえのない存在だとわかった。私どものところには早くから、たびたび足を運んでくれていた」と、シーガル氏は述べた。「前々から手を差し伸べていたということ自体に感銘を受けたので、他が尋ねてくるようになっても彼らが最初だったことを忘れたことはなかった。そして、実際、信じられないほど素晴らしいパートナーだった」

ただ単に、設立わずか4年も足らずでソーシャルゲームの世界で圧倒優位に立ち、顧客6000万人を抱え、間もなく15億ドルでIPOに臨む企業の上層部の口から出た言葉だからということではない。BRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)諸国の合計より多額の外国直接投資(FDI)の誘致に成功したアイルランド政府産業開発庁の仕事ぶりが垣間見えたことが興味深かった。

その戦略は壮大なものだ――アイルランド政府産業開発庁は世界中に職員を網の目のように張り巡らせて技術のトレンド、業界の動き、人の動きをきちんと把握しているだけでなく、シリコンバレーのような場所で新興企業を見出すことにかなりの力を入れている。アイルランド政府産業開発庁はこうした様々な企業と関係を構築し、企業側がいざ拡張しようというときにアイルランドが選択肢に入るようにしているのだ。

間もなく全米最大の企業となるアップル(Apple)社が、1983年に初の海外拠点をコークに開設したときには、わずか創業5年だったことを考えると感慨深いものだ。

ここ数年のアイルランド政府産業開発庁の取り組みの成果は、フェースブック社、EA社、リンクトイン社、ギルトグループ(Gilt Groupe)社、ビッグフィッシュゲームズ(Big Fish Games)社、クエストソフトウェア(Quest Software)社、アムジェン(Amgen)社、アクセンチュア(Accenture)社、Marketo社、ゼニマックス(Zenimax)社をはじめとする世界でも最も活気のある企業による投資に現れた。さらには、デル(Dell)社、EMC社、HP社、マイクロソフト(Microsoft)社等、既にアイルランドに拠点を持つ企業も、クラウドコンピューティング分野で投資している。1月にはインテル(Intel)社も5億ドル規模の新規プロジェクトを発表した。この輝かしい企業群により、アイルランドは「欧州インターネットの中心地」という称号を獲得した。

デジタル面をリードしていたのが、コンテンツ/コンシューマー/ビジネスサービス担当のエマニュエル・ダウドール、グローバル部門マネージャーだった。

「長い歴史の中でアイルランドが保ち続けてきた特質の一つが変革する能力、すなわち市場の動きを予測して対処する能力だった」と、ダウドール氏は言う。

「我が国の人材が真っ先に誰の頭にも浮かぶが、これも、アイルランドに誘致した企業の多様性を見れば一目瞭然だ。

今の時代、企業を魅了する環境とは絶対に時代の先を進んでいるものだ。ここで言う企業とは、ウェブ上で生まれ、デジタルネットワークに依存する企業、ウェブブランドやソーシャルネットワークのトップ企業だ。

こうした企業がいざ会社として、あるいは特定の市場から出ようと手を広げようとするとき、アイルランドがうってつけの選択肢と映るということなのだ」

記者は、アイルランド産業開発庁についてシーガル氏が述べたことへの感想を伝えた。「我々には急成長できる産業を見極める目があるのだよ」と、ダウドール氏は言った。

そして、ダブリンとリムリックで200人の雇用を創出しようとしているインターネット通販のギルトグループ社を挙げた。

「ギルト社との関係がうまくいったのも、テクノロジーが社会に与える影響を理解していたからだ。業界の特定の傾向を認識して、例えば、どういった分野がソーシャルネットワーキング上にもあるか、といったことを見ている。

また産業界のパートナーやベンチャーキャピタリストとも密接に協力し合うこともあれば、業界に精通した方々との人脈もしっかり確立している。こうした人々の状況を常に把握し、協力体制を作っていると、時としてアイルランドでの経験をもとに、今度は彼らのほうから2度、3度と協力してくれるようになるのだ」

この手法の好例がフェースブック社のシェリル・サンドバーグ最高執行責任者だろう。グーグル社のグローバル拠点拡大中のダブリンでの経験が、今度フェースブック社を拡張しようというときにこの都市を再度選択するきっかけとなった。

ダウドール氏は、企業による投資がその企業にとってと同様にアイルランドにも成功をもたらすことも重要な側面だと言う。

「第一に、ビジネスケースとして筋が通ったもので、必要な人材を提供できるものでなければならない。そして第二に、その製品やサービスが確実にアイルランドから売れるもの、市場に受け入れ態勢があるものでなければならない。

開放経済として我が国の持つ力から、明らかに、教育制度、そして上級管理職や中間管理職に適した人材を輩出する体制が、欧米を問わず、企業の出身地と合っていることが重要だ。

そしてこうした企業がアイルランドに来ると、必要なスキルがそろっており、政府の政策により支援・奨励される事業環境があり、インフラもある。それをすべてきちんと揃えることができ、操業コストも織り込んでおけば、我が国には膨大な機会があるということなのだ」

しかし、現時点でスキルの提供はアイルランドの多くの企業にとっても懸念点ではないか、とダウドール氏に投げかけてみた。仕事に就けるスキルを持った社会人を輩出できるのだろうか。

「アイルランドに進出済みの企業は格別に成長が速い。私の担当部門でも、例えばこれまでの成長も、現場での実際の仕事も、年率ほぼ8~10%ベースで伸びている。

教育インフラ制度も合わせたチームとしてのアイルランドを考えても、きちんと機能する。ある大学のコンピュータサイエンスの学部長を意思決定のキーパーソンがいるところに、例えばアクセンチュア社やダンアンドブラッドストリート(Dun & Bradstreet)社のプロジェクトの分析部門の候補地としてアイルランドが適切か否かを評価する場に迎えることは説明しくせないほど重要だ。

また、我が国には欧州経済地域以外から来る企業の支援に有効な制度がある。ある地域のスキルがほしい、あるいは査証が必要ということであれば、アイルランド政府産業開発庁が手続を迅速化できる」

ダウドール氏は、アイルランド政府産業開発庁では2014年末までに最終的に62,000の新規雇用創出を見積もっていると言う。

「経済便益で言えば、22,000人の新規雇用という経済効果につながると予測している。今日の外国直接投資の経済貢献度は大きい。現在、輸出の90%、製造の80%を手掛けているが、製造部門の経済への重要性を見過ごしてはならない」


「かなり活発な動きがある。遅くまで残業をしている人間も見ている。世界規模の環境に思いをめぐらせると、海外直接投資による国際的関心度が多少落ちても仕方がないと思うだろう。

それはない。アイルランドにはそれはない。我が国は幅広い分野で非常に多くの企業の最大の関心を集めているのだ」と、ダウドール氏は断言した。


本記事は、www.siliconrepublic.com から転載したものであり、原文は下記URLに掲載されています。
http://www.siliconrepublic.com/business/item/22877-delivering-on-digital/

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